聖なる鹿殺し/ネタバレ感想 ザ気持ち悪い少年vs隠れ気持ち悪いおじさん
久々に鬱映画鑑賞です。
「籠の中の乙女」「ロブスター」の監督作品「聖なる鹿殺し」。
完全ネタバレ感想です。
タイトルからは全く内容が想像つきません。
原題は「THE KILLING OF A SACRED DEER」。
日本語ポスターは「聖なる/鹿殺し」で区切られていますが、原題から推測するに「聖なる鹿/殺し」のほうが合っているのかな?
ま、鑑賞しても「聖なる鹿」なんていっさい出てきませんけどね。
全員気持ち悪い
「心臓外科医のスティーブン。患者遺族の少年に親身に接し、同僚にも恵まれ、妻は美人眼科医、娘と息子に囲まれ絵に描いたように裕福で幸せな家庭。」
文章だけで見ると成功者のお手本のような生活をしているスティーブンです。
が、なんとなく気持ち悪い。
スティーブンだけじゃなく登場人物ほぼ全員に気持ち悪い部分があって、それがこの映画の不穏な空気をより強くしている気がしますね。
私が思う本作の気持ち悪いランキングはこんな感じ。
第一位:マーティン
第二位:スティーブン
第三位:娘
第四位:マーティン母
第五位:息子
第六位:妻
(妻は気持ち悪いっていうより、頭おかしいランキングのほうが合ってる気も。「犠牲になるなら子供でしょ」発言には驚いた。といっても登場人物全員「自分が良ければOK」という感覚の持ち主でもある。)
マーティン少年は見るからに胡散臭く気持ち悪いので清々しいまでに気持ち悪いのですが(笑)、スティーブンは隠しているけど実は気持ち悪いじゃん!という感じ。
見た目はダンディーで優秀な外科医という雰囲気なのに、実際は全身に体毛びっしり生えていて、贅肉もだらしなく垂れ下がり、極めつきは全身麻酔をしたという設定の(動かない)妻に興奮する性癖の持ち主であるということ!
なので本作品は「ザ気持ち悪い少年vs隠れ気持ち悪いおじさん」が対決する映画といっても過言ではない。笑
ちなみにマーティンの気持ち悪さが爆発するのはスパゲティを食べているシーン。
まるで異常者が何かを捕食しているように見え、見てはいけないものを見てしまった。。そんな気分になりました。
説明のない不穏な空気
説明のない不気味さ。
最後まで続く不穏な空気。
名前のつかない現象による緊張感。
こういうのが苦手な人にはお勧めできない映画ですね。
逆にこういうよく分からないものが好きな人には良作かなと思いました。
わざと感情移入させない感じにしてるのかな、登場人物みんなが当事者意識がないように見えどこか他人事で、なぜかおとぎ話でも聞いているような感覚になります。(そもそも寓話として描いていた…?)
なのに!
なんでこの緊張感を保ったまま、ちょっと笑えるようなシーンを入れてくるのか!
そこがまた良いんですけどね。
感情移入させるような作りではなく、他人の生活に起こった出来事をのぞき見している感覚なので、そう考えるとそのちょっと笑えるシーンにも納得できます。本人は真面目にやっているというていでね。
(ちなみにそれは目隠しでライフルを打つシーンですよ。)
アイズワイドシャットを感じた
まったく違う話なのにアイズワイドシャットっぽく感じたのはなんででしょう。
ニコールキッドマンが妻役だから?
始終、不穏な空気があるから?
バカな男っているよねって話だから?
相手側が得体のしれない存在だから?
アイズワイドシャットが妻のイケたひと言で締めくくられたのに対し、聖なる鹿殺しは最後の一言もなく不穏なまま終了しましたがね。。
聖なる鹿殺し 総評
80点。
見た人によって評価が真っ二つに分かれる作品だと思いますが、私は面白く見れました。
得体のしれない現象についての説明がなかったのも良いなぁと思います。
これで呪いだのなんだのの件が入ってしまうことこそ白けてしまうのでは。
ちなみに寓話だとしたら教訓はこんな感じでしょうか。
「酒を飲んで仕事してると、とんでもないお返しがきますよ。」
調子に乗るなよってことで。